日曜の夕方の話

 2日の日曜日の夕方、向かいの家の塀の上でカラスが鳴いていた。いつまでも鳴いていて五月蝿いので、生ゴミがあるのかと外を見たが特にそんな様子もない。ついでにカラスを軽く威嚇してみるも完全になめた様子で鳴き続けている。暫らくすると近所の人が追い払ったようでガタガタと音がして鳴き声が遠くなった。
 コンビニに買い物に行こうと外出すると、暑くも寒くも無くまるで自分が空気となじんでいくような不思議な気温だった。少し夕焼けの気配のする空を見て、ああ明日は天気が崩れるのかと考えた。
 買い物を終えてコンビニを出ると空の端が完全に金色に染まって空気が黄色味を帯びてきていた。そういう時間なのか、やたらと人に会った。犬の散歩をする人、赤ちゃんを抱いて散歩をする人、夕食の買い物の主婦、ただ歩いている老人。みなゆっくり歩いている。私もゆっくり歩く。すれ違った犬を連れた夫婦が金色に輝く秋の雲を見て「地震雲じゃないの」と心配げに話しているのが聞こえた。
 誰そ彼時、黄色の闇に沈みかけていく街で自分も他人も境界が空気に溶け出して曖昧になっていくような奇妙な感じがした。正直、気味が悪かった。本当に地震が来てしまうんじゃないか。家で眠りこけている猫のことを考えて不安になった。山古志村にも猫や犬が取り残されていたのだから、猫だって地震を察知したりしないのかも知れない。家路を急いだ。


 まあ、それで結局別に何もなかった訳ですが。