「本当はこの文章系同人がすごい」アンケート

次回の文学フリマにて頒布される「本当はこの文章系同人がすごい」(id:ibuse)にアンケートを提出しました。前回の様子から事前に公開しても良いと思うのでこちらにも貼っておきます。
ところで整形してリンクを追記したところリンクをどこにするかでけっこう迷いました。検索すれば簡単に情報が見つかる今、リンクなどあまり意味がないのかもしれません。


★総評
小説を中心に買っています。読者に何を見せたいか製作者の思いが感じられる同人誌が好きです。

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「冷やし少女始めました」ソベルテクァイユ
三糸ひかり/小説/第九回文学フリマ
http://d.hatena.ne.jp/miitohikari/
少年少女を具材化し上品にいただきます。冷やし中華の具になった少女がにっこり笑う表紙が素晴らしい。奇想というか…笑っていいのか気味悪がっていいのか萌えていいのか…とにかく変な気分になりました。イラストもカラフルで楽しい本です。

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「雨の日、テトラポッドで」1103号室。
霜月みつか/小説/第九回文学フリマ
http://id47.fm-p.jp/287/roomno1103/
ゲイの美少年「時雨」と平凡な男「岬」の恋愛を描いた小説。「雨の日…」というタイトルに示されるように物語はどことなく憂鬱で、予想されたアンハッピーエンドへゆっくりと向かって行く。人形のように可愛い顔ながら女の子でないことに悩む時雨が魅力的。
対象に近づいて細やかに感情を追い少し距離をおいて風景を見せる、距離を変化させながらの描写が非常に巧みだった。若い女性らしい感受性のみずみずしさや可愛いものへの愛、独特の残酷さなどが全体に満ちていてこの本が好きになりました。

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「幻視社 vol.4」幻視社
東條槙生、柿崎憲、エンドケイプ、佐伯僚、岡和田晃、渡邊利通、向井豊昭、狩野若芽
小説・批評/第九回文学フリマ
http://www.geocities.jp/gensisha/
小説・批評ともにレベルの高い同人誌です。
この号では幻視社の常連作家陣の小説の中に渡邊さんの小説がそっと挟み込まれている。常連作家陣の外に向けてにぎやかに発散する作品群を読んだあと渡邊さんの内面に向けて囁くような静かな描写を読むと、それぞれの作風の違いがはっきり見えてそれぞれの良さが際立って感じられた。どちらの作風も好きです。

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「CENOTAPH」渡邊利通
渡邊利通、岩崎純一、安藤魚春/小説/第九回文学フリマ(幻視社に委託)
http://d.hatena.ne.jp/wtnbt/
収録されている三名の小説全て質が高くたいへん読み応えがありました。
「ギフト」離婚した妻の死をきっかけに娘を引き取ることになった中年男の身辺を彼を取り巻く女性模様から描く。主人公である男の語りがゆるやかに流れていく中、時おり時空が飛んだ描写が挿入され、物語を追っていた意識が文章に引き戻されるのが気持ち良かった。
「反転する世界の王女」 ずば抜けた文章の力と壮大な退廃のイメージに圧倒される。多数のイメージが交錯する物語を論理的に理解したとは言えないのだが読了後何か大きな物語が心に残った。
「幽霊する回帰 」幽霊の話から始まるので怪談だと思って読み進めると物語は奇妙な隣人のミステリーに変化し、かと思うとまた別の物語が立ち現れる。一見とっつきやすいのに物語も語りもはぐらかすようにずれていき分かろうとすればするほど騙されるのが楽しい。

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「Equal 迷宮の国のアリス I」Quantum EDiter
踝祐吾/小説/第九回文学フリマ
http://qed-jp.com/
十歳にしてIQ400の天才少女探偵が活躍するミステリー。「すべてがFになる」「ドグラマグラ」など過去の作品へのオマージュがやり過ぎというほど盛り込まれていて楽しい(残念ながら半分ほどしか元ネタを読んでいなかったのですが)。また、ミステリーのセオリーを踏襲しまくった謎解きが愉快でした。

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「コワカエ 第四号」コワカエ
森脇尊志、山本握微、渡辺公暁、田中堅次、発泡美人、殿内誠美、志方尊志、匿名希望、貞清和彦
小説・批評/第九回文学フリマ
http://d.hatena.ne.jp/takatako/
小説とその小説の批評を同時に掲載する意欲的な同人誌。加えて四号では新人賞の下読み経験者による下読み視点の評価が掲載されている。一つの小説を幾通りもの視点から読むことができるということを実際に体験できる。
読み物としては小説「幟合戦」から批評「今夜がヤマだ」「Tea Party」、そして巻末の下読み評へ至る流れが面白かった。「Tea Party」では小説の登場人物がお茶会を開いて批評を進めていくのだが、どうしても作者による楽屋オチの雰囲気がありそれを批評家が書いているという訳の分からなさに笑った。

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「掌編集」西瓜鯨油社
牟礼鯨/小説/模索舎にて購入
http://suikageiju.exblog.jp/
無駄の無い文体で書かれたごく短い物語が山盛りに詰め込まれている掌編小説集。どの物語も質が高く作者の知識と教養を感じさせる。社会風俗の描写が多く、またブラックな結末が多いことから異国の童話集のような印象を受けた。

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「ゆる本 vol.4」雲上回廊
言村律広、佐多椋、蒼ノ下雷太郎、秋山真琴、遥彼方/小説・短歌/コミティア91
http://kairou.com/
ゆるさをコンセプトに作られた同人誌。ゆるくて安心して楽しめる。100円という価格設定もいい。