サロン・ド・マロリーナ

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●文芸同人誌「サロン・ド・マロリーナ」創刊号
サロン・ド・マロリーナ


主催である竹内みちまろさんと感想を書く約束をしたので全作品の感想を書きます。


「革命、憂国、あるいは、太陽」竹内みちまろ
緻密な描写から主人公の竹内くんが周囲を丁寧に眺め経験を心のうちに蓄積していく様子が伝わってきます。大学生くらいの年齢で何かなさねばならない、だけど何をすればいいか分からないと焦る気持ちは非常によく理解できます。
ただ読者としては見聞を広げたあとの次の行動に一番興味があったので、そこが語られなかったのは物足りなく感じました。またタイトルからもう少し政治的な話を期待したのですがそうでもなかったので、タイトルが内容にあっていないように思いました。


「やな場まで」塵芥川文之介
高校生カップルの青さが良かったです。最後がちょっとホモっぽいシーンだったので笑ってしまいました。


「樅の木」新木寿幸
高志の妹を思う気持ちがよく伝わってきた。ただもみの木は物語との関わりが薄く物語の中心にすえるのは無理があるように思った。


花葬の影」和泉あかね
火葬場で働く若者の心情と小さな事件。
この作品が一番気に入りました。面白かったです。火葬場という特殊な職場ながら若者が仕事になじんでいくさまがあたたかい視線で綴られていて、視線のあたたかさがいいなと思いました。


「赤鼻物語」花川逍遥
話が途中で終わっている気がしましたが…読解力不足でしょうか?


「空襲警報」中村鷹一郎
描写はコミカルでオチも面白かったが、物語の主題がよく分からなかった。


「純白の猫」久賀耕平
猫の描写がリアルで面白かった。子供の一人称なのにときどきおじさんみたいなことを言っているので違和感があった。


「2つのピアス」内藤了
ピアスを中心に物語がぐるりと転換したところが見事だった。多分作者は男性だと思いますが、女性の心情があまりリアルに感じられなかったので男性主人公の作品を読んでみたい。


「しっぺ返し」中村鷹一郎
構成がきれいです。一郎という子供の名前は今っぽくないですね。



全体的には掲載作のクオリティにかなり差があるのが気になりました。創刊号ということなので今後どう成長していくか楽しみです。