全作レビューいただきました

蜜蜂いづるさんが「vol.8 奇妙」の全作レビューを書いてくれました。
どうもありがとうございます!!

http://mindgater.jugem.jp/?eid=123

表紙はvol.6をも担当されたOARFISH氏です。緻密な描線で描かれた幻想的な絵が素晴らしいです。この表紙と連動したショート・ストーリーが描かれ、そこから全体の『奇妙』という世界へと入り込んでいく造りになっています。 


 [小説] 口結び 有村行人(橋本賢一)
 夜中に聞こえる口笛に誘われて出会った女性に、とある儀式を教えてもらうという話です。有村さんの作品はこれまでも拝読してきたのですが、日常の中に不意に訪れる裂け目が見える(実は主人公が知らなかっただけで、そういった非日常的なものは存在したしこれからも存在し続けることが暗示される。非日常は日常とシンクロしている)という構成が有村氏らしいなと思いました。夜中に聞こえる口笛という聴覚から始まる部分が想像力を誘います。


 [小説] 非常口の少女 鳥久保咲人
 非常口のマークの中に自分の妹が存在すると語る男の話です。これは発想が面白いと思ったので、もう少し長い尺で読みたかったですね。次の作品があれば楽しみにしています。


 [小説] その者の名は 秋山真琴
 ローズロード辺境伯がふと目にした、中庭に存在する誰かの影。あれは一体誰なのか……辺境伯は少しずつ調査を始めて行く。秋山氏らしい、ミステリとファンタジックな要素が独自の匙加減で合わさった一品です。


 [マンガ] sofija,その回転 泉由良
 漫画、というよりは詩にも似た言葉とイラストが絡み合った一編です。スタイルに囚われない、乱舞する言葉の流れの中にそのまま身を投げてしまいたいかな、と。


 [小説] 誰かのお庭 三糸ひかり
 これも小説というよりは散文詩に近いものを感じます。中盤の「群がるものたちは池のほとりで踊っていた」以下に連なる言葉が好きです。羅列される言葉が様々なイメージを次々に生み出す、というような。


 [小説] ハーメルン 高橋百三
 ある日駅で見かけた、どこかへと流れていく人々の大群……そこから都市伝説風にストーリーが流れて行きます。これは個人的には最後はオチが綺麗に決まり過ぎているとも思うのですが(まあ好みの問題です)、凡庸な言い方になりますが人と人との人間が分断されて乱暴に流動する日常の中の、ちょっとした憧憬を感じさせます。


 [小説] 話して尊いその未来のことを 蜜蜂いづる
 拙作になります。「奇妙」というコンセプトを事前に伺った時に漠然とイメージしたのが『世にも奇妙な物語』だったので、あのオムニバスに登場するようなパラレルワールドというか設定がねじ曲がった世界を書いてみたいと思ったのが始まりです。どうせなら本家では絶対に出来ないことをやろうと思いました。タイトルはCharaの曲名ですが深い意味は全く無く、これを書いていた時によく聴いていたという程度の理由です。


 [小説] 眠れぬ夜の夢 文:伊藤鳥子 絵:くりまる くりまる氏のイラストがまず最初にあって、そこからストーリーが生み出されたという作品です。三つのイラストがあるから三つのパートに分かたれている、というのは分かったのですが舞台が三叉路というのも、その他に「三」という言葉(いじめっこの人数など)が重要なキーワードとして登場するのも仕掛けなのかな、と考えながら読むと面白いです。オチも綺麗に決まっていると思います。